なぜ「働かない権利」なのか-地を這う病者のアルバイト・仕事歴から
⑬重度心身障害者のみなさんの通所援護事業所での介護
六年やらしてもらえた、唯一のとてもよかった仕事だったが、腰と膝を悪くした。自分のクスリと病状で、介護している人への責任が持てなくなると想い、自主的に辞めた。この時は、本当に惜しまれて辞めたよ。
勤めていた時は、病気のことは一切言わなかった。ツマリ隠して、隠し続けて勤めていたわけです。クスリは、どうしたかって?モチロン、隠れて飲んでいたんんですよ、便所でね。だから、お泊まりイベントの時が、実にツラかったかな。旅行の時とか、お泊り会の時の介助は、実は、ツライものだった。とっても、愉しかったのではあるが、眠剤の飲むタイミングを間違えると、タイヘンだった。
月水か月火の二日間が基本だが、それ以外に月一度の木曜のミーティングや、土日祝日のイベントや、旅行にもよく行った。タイヘンだったが、愉しかった。あの面々での一泊二日の旅行と、初期のころの「ヤッほーフェスティバル」の準備は、愉しくも、しんどくも、素晴らしくもアッタ。あの催しは、凄かった。いい想い出ですね。ひとり一人の顔と名前と共に、たくさんの想い出がある。素晴らしい想い出がある。唯一の、唯一の良かった、やれてよかったと想えるシゴトであった。
しかも、さらに、有難い事は、まさにココでココで、感得させてもろうたことが、アルのですよ。ツマリ、「障害」が違えば、「家族」との関係、「医療」との関係、「スタッフ」との関係も、「制度的」要求の在り様も仕方も、「政策的」方向も意味づけも意味合いも、また、我々キチガイと、重度心身障害者のみなさんとで、チガッて当たり前だ、というコトを実地で、感じさせてもらった。チガウべきである、とも想った。
そうだから、キチガイの側の精神病院に対する想いや、家族会に対する想いと重度心身障害者のみなさんとが、一緒になるわけは、無いのである。チガイがあって当たり前だと想ったのである。逆に言えば、例えば、精神障害者の家族会の目指すものと、重度心身障害者の家族会が目指すものとか、一致するわけはないのである。してはならないのである。だって、障害がチガウのだから。精神障害者の当事者会と家族会の関係性と、重度心身障害者のソレとも、同じになるわけはないのである。同じであるという側面ももちろん、アルのはあった。でも、チガウのだ、というこの点が、本当に、ジッサイのセーカツの中での、腑に落ちたのである。
だから、その点でも、「自立支援法」には、反対である。「障害者」とひとくくりに出来得ない、それぞれのモンダイや課題、苦しみや哄笑をかかえているのだから。
そう、だから、我々キーサン患者会の叫びが、如何に的を突いていたものだったかは、まさに、まさに、まったく別の障害で生き、笑い、喜び、泣き、苦ししんでいる皆さんとの地に足の着いたセーカツの中で、えばっちが、感得させてもらったモノだったのである。だから、まさにココだけが、えばっちの賃金を貰うという職歴の中で、唯一感謝している職場なのである。ただし、けっこう肉体的にはキツかった。結果的には、腰と膝は、ケッコウ古傷にナッテシマッタと想う。以前の肉体労働の古傷と共に。
そして、実は、ここに勤めている間に、三回目の入院を経験した。よくバレなかったものだと想ったが、どうも、この時に、施設長は、ピンときたようやね。後で聞きました。退職してから十年経ってから、初めて、再度交流に訪れて、最初に聞いたことは、えばっちが、精神病患者と気づいたのは何時だったのか、という質問でした。
「当事者スタッフ」という問題意識も、実に、ココで深まったと言える。ココでのゲンジツで、ホントに想った。基本「当事者スタッフ」反対です。季刊誌『福祉労動』一六〇号に書かせていただきました。ご覧になって頂けるとありがたいです。
それと、スタッフ間の軋轢、スタッフと親御さんとの軋轢、のモンダイもありました。それが大変なコトになっちゃって。忘れられないのです。ジツは福祉の現場では大事なコトを示唆しているのですが、これは普遍性の在るモンダイと想っているのですが、なかなか描けません。どう書けばよいのか。そして、ここでのなかまの一人ひとりのみなさんとの想い出も、たくさんあるのだけれど、それは、また、別稿で書きたいと、想います。ココでは、まぁ、エバッチの労働ゲンバの簡単な怨念紹介と云うこと、ですから、ココまででご勘弁のほどを。
例によって例のごとく、ココでも、便所グスリでした。でも、同じ便所グスリしてても、気持ちは楽だった。
精神病患者会前進友の会やすらぎの里作業所
あくまでキーサン革命の鬼えばっち 江端一起
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