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えばっちの怒りと復讐の話になった時、い君が言ったのである。「えばたさん、ボクもね、ホントはね、社会に対する漠然とした殺意があるんですよ」と、言ったのである。で、僕は「えぇぇぇーーお前もそうなのか。参っ

さらに心の底のほの暗い闇が続く。
みんなの部屋の中で話していると、実に、想いもよらないなかまから、想いもよらない言葉を聞くときがある。その言葉を聞いたとき、まさしく、い君のその言葉は、まさしく、俺の中の言葉だと思った。その言葉を、ここに書いてしまうことが、少し恐ろしい。けれども、本人の了解のもと、その言葉を書いておきたいと想う。それは、みんなの部屋の中の廊下の突き当りにある自分たちで手作りで作り上げた「ゆうゆう」と云う喫茶スペース、喫煙スペースでのことであった。
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い君とえばっち、そして誰がいたんやったかな、患者会らしいよもやま話の中、ついつい、えばっちの怒りと復讐の話になった時、い君が言ったのである。「えばたさん、ボクもね、ホントはね、社会に対する漠然とした殺意があるんですよ」と、言ったのである。で、僕は「えぇぇぇーーお前もそうなのか。参ったな、おどろくな。おまえもか。漠然とした社会に対する殺意なのか?漠然なのか?ふーん、俺はよう、漠然というよりは、はっきりしたとした対象が決まった殺意なんだけどな、相手が決まってるのよ、夜よ、布団の中でよ、真っ暗な天井見てるとよ、相手の顔が出てくるんだよね」「でもよ、そういや、俺だって、世間様に対する漠然とした、全ては滅んでしまったらええのや、というのはあるなー」
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「ここによ、宇宙消滅爆弾のスイッチがあるとするよな。や君とかよ、ざ君とかが、宇宙の大統一理論を完成させて、宇宙消滅装置みたいな理論イコール装置みたいなものを完成させて、そのスイッチがあるとする。これ押すか?」「俺は即座に押す。迷うことなく躊躇することなく即座に押す。やっと楽になれるんや。」「いやーワシは押せんな」と、誰が言ったのか。くちゃんは、「俺は押さんで」と言って、御大師様の全ての生きとし生けるもの全てに仏性があるのや、というようなことを力説しだす。すると、ざ君が「くちゃんは偉いなぁー、だから副代表なんやね、僕は押すかもしれません、押すなー、でもその前に大統一理論を完成しなくっちゃ」「い君よ、お前どうする?社会に対する漠然とした殺意あるけど、子供もおるし、このスイッチ押せんやろ?」で、い君はこう答えたと想う。「押せませんよ。でも、社会に対する漠然とした殺意はあるんですって」で俺は、「俺はそのスイッチ押すわ。本当にあったらな。この押すか押さんかが、何かの分かれ目かも知れんな」というような会話をしていたのを想い出す。
 
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い君が彼なのではない。スイッチを押してしまう俺が、彼なのである。
 

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